技術レポート
09/2022
5Gで注目を集めるフッ素材料
5Gの登場により、私たちの通信の利便性は大幅に向上することが期待されています。5Gのコンセプトである「高速大容量・低遅延・多数同時接続」の実現と普及にむけて、ダイキンのフッ素材料や技術が注目されています。
1. 5Gとは
5G(第5世代移動通信システム)は、これまでの4Gでは実現できなかった高精細・大容量コンテンツの高速伝送を可能にする通信技術です。
図1. 5Gの特長
2. 5G普及への課題は「ミリ波周波数帯」の通信
5G通信は既にサービス利用が開始されていますが、普及にはいくつかの課題が指摘されています。その一つは、5Gに使用される高い周波数領域(ミリ波周波数帯※)で、電波の損失が大きくなることです。
具体的には、プリント基板や通信ケーブルといった伝送部材において、一部のエネルギーが消失してしまう「伝送ロス」が大きくなります。
そこで、5G通信の普及に寄与しうる材料として、ダイキンのフッ素材料や技術が注目されています。
※ミリ波周波数帯とは、現在使用されている周波数帯である800MHz-2.4GHzに対して、28GHz以上のミリ波帯域を指します。
3. フッ素樹脂材料が5G普及へのカギに
フッ素樹脂は、誘電率が小さく、誘電体の損失を表す誘電正接(tanδ)が小さい素材として知られています。
誘電正接が小さいことは、伝送ロスを低減し、電気信号の遅延を改善することにも貢献します。この優れた電気特性を活かして、スマートフォン、基地局のアンテナ、データセンターのルーターやスイッチ等に使用されるプリント基板やケーブルの材料として、フッ素樹脂の活用が検討されています。
図2. フッ素材料の電気特性
4. 電気特性以外でも注目されるフッ素樹脂の特性
フッ素樹脂は、電気特性だけでなく、難燃性、耐候性、低屈折性といった機能面においても優れた素材です。
例えば、高いセキュリティ環境が要求されるデータセンターでは、火災が発生した際に燃えにくい難燃性を持つ材料が求められます。フッ素樹脂は、難燃性の高さが評価され、主に北米市場において、データセンターで使用されるLANケーブルの被覆材料として採用されています。
またフッ素樹脂は、雨や紫外線にさらされても劣化しにくいという耐候性も持ち合わせています。基地局のアンテナへの使用を想定すると、他の樹脂素材に比べて経年劣化が起こりにくい材料です。長持ちすることから、基地局の保守点検の工数を下げられるという副次的なメリットもあります。
さらに、低屈折性を活かして、プラスチックオプティカルファイバー(POF)のクラッド材料として、車載のオーディオ周りに採用されています。導線に対してPOFを使用することで、軽量化や設計自由度の向上が期待できます。
図3.フッ素材料の用途
5. 5Gから6Gへ、高速通信の実現に貢献するフッ素材料
次世代通信の6G通信(beyond5G)では、ミリ波よりも波長が短い、「光」を用いた無線通信の活用も期待されています。ダイキンでは、現行のフッ素樹脂の改良を重ね、誘電率と誘電正接をさらに低下させたフッ素樹脂の開発や、低屈折率に優れた光通信材料の開発にも取り組んでいます。
ダイキンは、これまで2,000以上のフッ素化学製品を生み出してきた技術力を活かして、5G、6G通信による新たなサービスやビジネスが登場する未来の実現に、貢献しようとしています。