技術レポート
08/2022
フッ素樹脂PFAがもたらす新たな3Dプリンティングの可能性
ダイキンは、3Dプリンティングの「粉末床溶融結合法(PBF方式)」に対応したフッ素樹脂PFAを、世界ではじめて開発しました(※)。フッ素樹脂PFAは耐薬品性、耐熱性や耐候性に優れているため、半導体や医療用途などへの展開が期待されます。
※2022年8月時点
1. 3Dプリンティングによる試作・量産の低コスト化
フッ素樹脂PFAの一般的な成型方法は射出成型・押出成形です。射出成型には金型作成が必須である一方、3Dプリンティングは金型が不要です。そのため、試作・量産時ともにコストダウンが期待できます。
・試作
3Dプリンティングは金型不要の生産方式です。複数形状の造形も可能であり、試作費用の低コスト化と時間の短縮につながります。特に、少量の試作品を作りたい場合には、費用面でのメリットが大きいといえます。
・量産
射出成型は、同一のものを大量に生産する場合にはコストメリットがありますが、少量多品種には適していません。また、同一のものであっても複雑形状の場合、後工程が必要となります。よって、一度で複雑形状を成型できる3Dプリンティングの方がトータルでのコストメリットに優れます。
図1. 3Dプリンティングのプロセスメリットとプロダクトメリット
2. 3Dプリンティング成型品の性能
フッ素樹脂の主な特長として、耐熱・低温性、耐候性、耐薬品性が挙げられます。これら特性において、3Dプリンティング成型品は、従来方法による成型品と同様の性能を有しています。
・耐熱、低温性
フッ素樹脂PFAの連続使用温度は260℃です。その耐熱性から、半導体製造装置向けシール材や継ぎ手、バルブに使用されています。高温域だけでなく、液体窒素の雰囲気下でも使用できる低温特性を持ち合わせ、幅広い温度域で使用が可能です。
・耐候性
3Dプリンティングの材料として広く使用されているアクリルやエポキシは、耐候性に課題があります。フッ素樹脂は、建築物の経年劣化を抑制するためのコーティングやテント膜の材料としても使用されており、耐候性が高く、屋外用途にも適しています。
・耐薬品性
フッ素樹脂PFAは酸・アルカリ・有機溶剤等に対する耐薬品性に優れています。そのため、用途の過半が半導体製造工程向けで使用されています。他の素材では耐えられないような、過酷な環境での使用が可能です。
・機械特性
従来方法の成型品と比較して、破断応力15MPa以下と破断伸度150%以下の領域、及び弾性率と降伏応力においては、同等の性能を示しています。
図2. 3Dプリンティング品と熱プレス品の引張試験の結果
3. フッ素樹脂PFAで広がる新たな用途の可能性
ダイキンのPFAパウダーは純度100%のPFAのため、フッ素樹脂の基本性能が活かすことができます。半導体や医療用途などへの適用が期待され、フッ素樹脂PFAがもたらす3Dプリンティングの新たな可能性を探求しています。
注)本開発品は一般産業用であり、医療機器の適性や安全性を保証するものではありません。
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